日本聴覚障害ソーシャルーワーカー協会 2006年度事業方針
2006年4月に障害者自立支援法が施行され、10月に相談支援事業を含む地域生活支援事業等が事業開始されます。それに先駆けて7月に、日本聴覚障害ソーシャルワーカー協会が設立されることは、時流にあった不思議なタイミングを感じています。
戦後、社会福祉制度が施行された時代を振り返ってみると、聴覚障害者が我が国で安心して暮らしていける社会となるためには、聴覚障害運動団体の取り組みが大きな効果を上げています。
手話通訳の例をみましても、ある裁判で、聴覚障害者に情報保障がされず、聴覚障害者の権利が守られてないことを受け、手話通訳制度化実現のために全国的 な運動展開がはじまり、現在手話通訳士という厚生労働省認定資格に繋がっています。
聴覚障害者に対する相談については、ろうあ者相談員制度として、多くの先人が生活問題を抱えた聴覚障害者へ真摯に対応されています。
当協会は、こうしたろうあ者相談員制度などで築かれた実績と経験を尊重しながら、今後は、社会福祉士や精神保健福祉士など国家専門資格をもったソーシャルワーカーによる対応が求められている時代となってきているなかでの設立となります。
例えば、医療分野や法律分野では、医師、弁護士、看護師等、その内容に関わる国家資格をもった者でないと業務にあたれません。反面、聴覚障害者の重要な生 活問題を支援するには、国家資格がないろうあ者相談員や手話通訳者も支援することができるのが現状です。しかし、10月からの自立支援法の相談支援事業の 相談職には、社会福祉士等の国家専門資格がもとめられており、また地域包括支援センターにも必ず社会福祉士を職員として設置すると位置づけされていること から、国家資格をもったソーシャルワーカーが求められています。
そして、聴覚障害者の場合、コミュニケーションの問題がどうしても生じます。ましてや、生活問題を抱えている聴覚障害者の場合、手話が通じればいいとい うものではなく、本人の訴えをつかみ、整理し、モニタリングし、専門機関につないでいくというケースマネジメントが必要です。
今年の10月から障害者自立支援法は、一人ひとりの利用者が、必要に応じて支援を受けられるように、市町村の必須事業として相談支援事業を位置づけてい ます。いまだ多くの市町村では、どのように対応するか本当に相談支援体制が整えられるかどうか不安を感じている最中でしょう。この事業は、市町村福祉事務 所のケースワーカーが中心に関わっていく地域が多いと思われますが、聴覚障害者対応がうまくいっているかというと、必ずしもそうではありません。聞こえな いために声の調整ができない本人に対して違和感を感じたり、手話通訳がついたら説明がわかるはずという思い込みのもとで、内容が伝わらないということを把 握できてないケースワーカーの存在が多いことは、改めて言うまでもありません。
こうした聴覚障害者に対する相談支援業務に対応すべく、最終的には地域ごとに会員を配置できるようにしたいと思っていますが、現状では重点地域単位に配置 できるようにし、そういう地域から聴覚障害者関係の相談支援事業を受けていくということが考えられると思います。
また、今年度を含めた継続研究事業として、成年後見人制度に対する研究を予定しています。聴覚障害を持った一人暮らしの高齢者の生活全般を支える大きな枠組での、ソーシャルワーク的活動としてコミュニケーションができるソーシャルワーカーが関係していくべきだからです。
加えて、地域の中で、悩みながら、実際に相談支援を担当している方が、ろうあ者相談員をはじめ、ピアカウンセラー、身体障害者相談員など、数多くいま す。この方々と、緊密に連携しながら、聴覚障害者本人を中心にすえて、制度に振り回されることとなく自己決定を尊重しながら地域生活を支えていくことを、 側面から支援できるようにしていきたいと思っています。そのためには、地域の求めに応じて、積極的にリーチアウトしていく必要があります。
研究発表会を開催するにしても、協会事業を実施をするにしても、今の今、生活問題を抱えながら、必死で生きている聴覚障害者が全国に存在していること を、常に念頭にすえ、聴覚障害者の生活に密着した活動を基本としなければ、いくら専門性を旗印にあげても、無意味なことになるでしょう。私たちは、全国の 聴覚障害者の暮らしに正面から向かい合い、そこで生じている生活問題を本人が克服していこうとするのを、側面からきちんと関わっていく、そこに、専門性と いう意味を見出すことを常に忘れず、協会運営を進めていくことをお約束し、事業方針案といたします。